誰のための結婚式かを、撮影時のディレクションから考える

ファーストミート

先日の結婚式撮影でのこと。

お支度完了の少し前、ファーストミートの場所をここにしようと決めた時だった。

 

「ファーストミートを何回かに分けてやっていいですか?」

 

同じ撮影に入っていたエンドロールムービーのカメラマンからそう聞かれたので、「テイク2、テイク3という感じで何回か同じことをやってもらうってことですか?」と聞くと、違うと言う。

「いえ、新婦さんが新郎さんの後ろに来たら声をかけて止まってもらって、私が回り込んで動いて準備ができたら、肩を叩いてくださいという声かけをしてポンポンとしてもらう、という感じです」

それを聞いて、僕は悩むことなく断った。

 

テイク2、テイク3とやるなら、僕はテイク1だけ撮れば、二人の本当の感情や表情を撮れる。
けど、カメラマンの都合で、その都度声をかけて指示を出して何かをやってもらうと、それはもうリアルじゃなくなってしまうからだ。

実際にやる作業自体は変わらない。でも感情が違ってしまう。

 

どういうことかと言うと、二人が初めてドレス姿を見る・披露するという、本来であれば二人だけの空間に、第三者であるカメラマンがああしろ、こうしろと言う。

そしたらもうそれは、二人だけのファーストミートではなくなってしまう。

そして、きっと二人だけだったら出た笑顔や涙も、カメラマンの指示に従うことで、間違っちゃいけないとか、はい次こうするんですよね、ということに意識がいってしまって、目の前のファーストミートに感情移入できず、本来の感情が、表情や仕草に表れなくなってしまう。

 

ファーストミートはカメラマンのためにあるんじゃない。

 

ミスをしたくないのはわかるし、いつも通りやりたいんだと思うけど、「それじゃ本当の二人の表情が出ない」ということをきちんと説明して、次のような代替案を出した。

「もし移動時間やカメラのセッティング時間を稼ぐ必要があるなら、その時に言わずに、あらかじめ言っておいたらいいですよ。ゆっくりやってくださいとか、気持ちを落ち着けるために新郎さんの後ろに着いたらひと呼吸おいてくださいね、とか」

これであれば、本来の二人のテンポじゃないかもしれないけど、その瞬間は二人だけの世界になる。
この方がきっと二人にとって、本物のファーストミートになる。

結果、新婦さんは涙していました。

 

僕は昔、ドキュメンタリーを撮っていたので、その頃は被写体に自分が指示を出すなんてことはご法度だった。もちろんやったことはない。

ウェディングもドキュメンタリーなんだけど、「よりこうであったらいいな」という思いが交錯する場であり、その写真は撮影者と注文者だけのプライベートなものなので、指示をしようが何をしようが、両者が納得していたら問題ないことになる。

だったらもう全部バリバリ決めて撮ったほうが綺麗に映るからいいんじゃないの?と言う人もいるかもしれないけど、僕は絶対にそんなことはしない。

なぜなら、カメラマンの指示でやってもらうことよりも、その場で偶然起こることのほうがより強く感動的なことが往々にしてあるからだ。

だからドキュメンタリーが面白く、文章でも映像でも、ずっと根強い人気を誇っているジャンルとして確立しているんだと思う。

 

人によっては「そんな細かいことどうでもいいわ」と言う人もいるかもしれないけど、今の僕の写真があるのは、こういう細かいことの積み重ねのおかげだと思う。

クッポグラフィーのウェディングフォト・ワークショップでは、このように、撮影時に気をつけていることや、カップルの本当の感情を引き出すにはどうしたらいいか、といったことなどをしっかりお伝えしています。

テクニックばっかり教えられている人たちにこそ知ってほしい。

こういう意識や、それを表現に落とし込む方法が身につけば、もっとウェディングフォトの深みを知ることができ、また撮影がどんどん面白くなっていきます。

 

ワークショップの次回開催は、2018年8月21日(火)・22日(水)です。ご興味のある方は、下記リンクから詳細をご覧ください。