ワークショップ受講者へのインタビュー case#1

Akira Shingaki - gakky photography -

受講したワークショップ:第一回 Basicワークショップ

 撮影技術はもちろん、フォトグラファーとして目指すキャリアプランを実現する具体的な方法に至るまで、講師が自らのノウハウを余すところなく語り尽くすkuppographyによるウェディングフォト・ワークショップ。「撮影に対するモチベーションが格段に上がって撮影が楽しくなった」「今後のキャリア構築の道筋が見えた」等、毎回多くのフォトグラファーから反響を得ています。

 今回、インタビューにご協力いただいたのは、2015年8月の第一回 Basicワークショップに参加したフォトグラファー・新垣旭(しんがき・あきら)さん。どんな思いでワークショップに参加し、そして何が変わったのか、インタビューさせてもらいました。

聞き手:久保真人

 

新垣 旭

 沖縄出身のウェディングフォトグラファー。大手結婚式場への入社とともにウェディングフォトグラファーとしてのキャリアをスタートさせる。その後、独立して請負の撮影を中心に行いながら、自ら立ち上げたgakky photographyがインスタを中心に話題を呼んでいる、いま注目のウェディングフォトグラファー。


結婚式場専属からフリーランスへ、フォトグラファーとしてのキャリアを模索

久保:お久しぶりです。人気者になっちゃって、お忙しそうですね?

新垣:いや、まだまだですけど、おかげさまで撮影は増えています。なんか緊張しますね(笑)。

久保:ワークショップ受講者への初インタビューなので、よろしくお願いします(笑)。さっそく始めていきたいと思いますが、僕もそういえば最近の新垣さんのキャリアしか知らないので、まずは写真を始めたところから現在までの状況を簡単に教えていただけますか?

新垣:わかりました。僕がカメラに出会ったのは10年前のことです。沖縄から上京して趣味で写真を撮っていたところ、応募した雑誌に写真が掲載されるようになり、だんだん自信が持てるようになってきました。その頃は飲食店でアルバイトをしていたのですが、将来、飲食の道へ進むか、フォトグラファーを目指すかはまだ迷っていました。その答えを見つけるため、オーストラリアへ自分探しの旅に出たんです。

 その旅の中で、僕の人生を変える出来事がありました。あるドイツ人の女性と知り合ったのですが、最初彼女は僕がカメラを向けるとすごく嫌がったんです。「私は写真写りが悪いからあまり撮らないで」って。でも、しばらく経ってだんだん仲良くなり、ある日もう一度レンズを向けるとすごく自然に笑顔を見せてくれた。撮った写真を見せると、あんなに写真嫌いだった彼女が「こんな素敵な表情をしている私、見たことないわ!」と大喜びしてくれました。僕はそれまで写真を「自分のため」に撮っていたのですが、このとき初めて、誰かのために写真を撮り、感動を与えられるということを知ったんです。それがきっかけで、本気で写真の道に進もうと決めました。

久保:自分探しの旅で、本当に「自分」が見つかったんですね。写真のジャンルはたくさんある中で、どうしてウェディングフォトグラファーを選んだのですか?

新垣:僕はもともと女性のポートレイトが好きだったし、何より誰かの笑顔や幸せな瞬間を撮るのが大好きだったんです。そういう意味で、結婚式の撮影というのが一番自分に合っていると思えました。帰国してから1週間後には都内の大手結婚式場に入社し、ウェディングフォトの基本を一から学ばせてもらいました。そこで5年ほど勤めた後にフリーのフォトグラファーとして独立し、現在は大手のウェディングフォト撮影会社からお仕事をいただくと同時に、自分名義のWEBサイトに直接お問い合わせいただいたお客様の撮影を手がけています。

久保:なぜ安定したポジションを捨てて、フリーランスでやっていこうと思われたのですか?

新垣:一言で言えば、「もっと自分らしく撮りたかったから」ですね。結婚式場に所属しているとどうしても撮影件数が多いし、オリジナリティを出すのが難しい。経験を積めて勉強になる反面、流れ作業っぽくなってしまう面もありました。もっとお客様とコミュニケーションをとり、よりクオリティの高いウェディングフォトを撮るには、独立するしかないと思ったんです。

 

「もっと自分らしく撮りたい」という思いを追求し、ワークショップへ参加

久保:どうしてクッポグラフィーのウェディングフォト・ワークショップに参加しようと思われたのですか?

新垣:会社を辞めてフリーランスになったとはいえ、独立して1、2年の間はほとんど撮影会社からの委託を受けて仕事をしていました。生活はそれなりに安定していたのですが、やはり撮影会社の仕事では100%自分の撮影スタイルを貫くことはできない。かといって、個人で立ち上げたホームページからはほとんど仕事が来ない。これじゃ本当の意味で独立したとは言えないじゃないか、と思い悶々としていたわけです。

 そんなとき、ワークショップのことをFacebookで知り、「これだ!」と。もともと、久保さんのことはFacebookで知っていたんです。僕はどちらかというと日本のウェディングフォトよりも海外の写真の方が好きでよく見て勉強しているのですが、久保さんの作品はまるで海外のドキュメンタリー写真のようで、ありのままの現場の空気が伝わってくる。ワークショップの料金はちょっと高いなと思ったけど(笑)、それで久保さんの撮影技術を盗めるなら、参加するべきだと思いましたね。結論から言うと、金額以上の価値はありました。ワークショップで知り合ったフォトグラファーと同じ電車で帰りながら、「あの料金だとむしろ安い。次は値上がりするんじゃない?」なんて話してました(笑)。

 

実際の撮影現場を見学し、実践的な技術を学べる

久保:ワークショップではどのような点が印象に残っていますか?

新垣:まず、久保さんの実際の撮影現場を見せていただけたのが勉強になりました。アシスタント時代を除くと、他のフォトグラファーの仕事風景を見る機会ってほとんどないじゃないですか。僕のときは、スタジオでのメイク撮影と、近くの公園を利用したロケ撮影でしたよね。複数の光源がある室内できれいに色を出すための方法など、具体的な撮影技術を現場で見ながら学べるのはとても実践的な勉強になりました。

 あと、「初対面のカップルとどのようにコミュニケーションをとるか」ということもずっと学びたいと思っていました。久保さんとモデルのお二人もその日が初対面とのことだったので、どうやって自然な表情を引き出していくのかに、特に注目しました。実際に見ていてまず「なるほどな」と思ったのは、久保さんの撮影は気づいた時にはもう始まっていますよね。公園でロケ撮影をするときも、「今から撮影を始めます」みたいなことは一切言わず、一緒にぶらぶら歩きながら、何気なく試し撮りをしているような雰囲気でシャッターを切っていく。だからモデルのお二人も変に身構えることなく、自然に撮影体験に入っていけるんだなと思いました。そして気づいたら二人とも撮影を楽しみ、多くのフォトグラファーに囲まれた特殊な環境にもかかわらず、お互いのことを思い合った素敵な表情を見せていて、さすがだなと。テクニックはインターネットや本でも身につけることができますけど、コミュニケーションやムード作りってどこにも載ってないじゃないですか。そのアプローチの仕方を知ることができたのは、これから何年も撮影を続けていく自分にとって、すごく大きかったと思います。

 

ホームページの見せ方やスタジオ運営など、経営面のアドバイスも充実

新垣:それから、僕みたいなフリーランスにとってうれしかったのが「集客」や「スタジオ運営」に関する講義も聞けたことでした。ウェディングフォトの世界では個人でマネジメントをしている人がほとんどいないので、久保さんがウェディングフォトを軌道に乗せた経緯や、その過程で気を付けたことなどを具体的に聞けたのは、本当にありがたかったですね。色々お話を聞いた中で一番ためになったのは、「自分のキャリアとともにウェブサイトをどう変えていくか」ということでした。これはワークショップの後すぐに実践し、効果を感じています。また、ビジネス面のお話ではkuppographyの運営で年ごとにどれぐらいの売上が出ているのか、その内訳はどうなっているか、そしてその時の撮影料金はいくらだったのか。将来、自分のスタジオを持ちたいと考えている僕にとっては、非常に貴重な情報でした。「ここまで公開してくれるんだ!」という驚きも大きかったですね。

久保:ありがとうございます(笑)。有料のワークショップに来ていただいているからには、持っている情報を出し惜しみするのはフェアじゃないと思ったんです。日本のウェディングフォトグラファーの多くはアルバイトかと思うような給料や、それに近い金額のギャラで働いていて、新垣さんも実感していると思いますが、フリーランスで自活していくのって本当に難しいですよね。僕自身、最初は自宅で一人、しかも他の仕事をしながら少しずつ個人での撮影を増やしていきました。前例がほとんどない中、手探りでkuppographyを作り上げていったわけなんです。

 根本的なところに戻って話をすると、なんで日本のウェディングフォトのレベルが低いのかというと、一番大きな理由は「食える」職業じゃないことだと思うんです。生活できない職業には誰も憧れないですよ。だからkuppographyは、フリーランスのウェディングフォトグラファーとしてチームに所属しながら、それだけでも生活ができるんだということを証明したい、そのロールモデルを作りたいと思って続けています。でも全国のウェディングフォトグラファーが全員クッポグラフィーに所属するというのは現実的ではない。それなら、ビジネスのやり方がわからなくて悩んでいるウェディングフォトグラファーに、僕の経験をシェアして最短ルートで理想のキャリアを実現させてもらうのがいいんじゃないかと思ったんです。そうやって「食える」ウェディングフォトグラファーを増やすことで、日本のウェディングフォトをもっとよくしていくという方法もあるんじゃないかなと思って、ワークショップを開いています。受講者の皆さんも、ビジネスに関する話に入ると目の輝きが変わりますよね(笑)。

 

ワークショップ後に「自分らしさ」を再発見

久保:ワークショップに参加した後、変化はありましたか?

新垣:まず変えたのは、SNSやホームページにアップする写真です。以前はあまり深く考えず自分が気に入っている写真を載せていたのですが、ワークショップでブランディングの考え方を学び、「想定されるお客様に向けて、どんな作品を見せれば自分を選んでもらえるか」を考えるようになりました。それだけの理由ではないかもしれませんが、問い合わせが去年の何倍かに増えましたし、自分の求める客層にリーチできるようになってきました。あと、SNS経由の問い合わせも着実に多くなっています。

久保:作品そのものの変化を実感することはありますか?

新垣:劇的によくなったと思います。どこが変わったか、なかなか言葉で表現するのは難しいのですが……。

久保:僕が最近の新垣さんの写真を見て感じるのは、「うまく撮ってやろう」という力みがなくなったな、ということです。新垣さんの写真はワークショップ前からすごく上手で、センスを感じさせるものでした。でも、我々プロが見たときに「巧いな」と感心する写真と、お客様が素直に喜ぶ写真はちょっと違ったりしますよね。最近の新垣さんの作品は「技術を見せたい」という気負いから解放されて、より素直に「新郎新婦の幸せな瞬間を残してあげたい」という思いが込められているように思えます。そういった変化をホームページを見る人も感じていて、だからこそ依頼が増えているんじゃないかな、という気がします。

新垣:確かに、その通りだと思います。カッコつけなくなったな、と思いますね。ワークショップのおかげでお客様と心地よい距離感をつかむ大切さも学びましたし、前よりずっとお二人に寄り添った写真が撮れるようになりました。独立したときに掲げた、「自分らしい写真を撮りたい」という目標に一歩近づけたと思います。

 

インタビューを終えて……

 ワークショップを経て、フリーランスフォトグラファーとしてレベルアップを実感したという新垣さん。今後の野望を訊くと、「いずれは故郷・沖縄に帰り、自分のスタジオを立ち上げたいですね。東京で僕が結婚式を撮影したお客様が、お子さんを連れて沖縄のスタジオに遊びに来てくれて、今度は家族写真を撮る……なんて、最高じゃないですか。そのためにもこれから4、5年でしっかり成長できるよう、ワークショップで学んだノウハウをフル活用して頑張っていきたいです」と語ってくれました。