Masato Kubo

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ウェディング現場でのストロボライティングの必要性とメリット・デメリット

はじめまして!クッポグラフィーの折原です。

僕は過去にストロボライティングについてのワークショップを何度か行いましたが、そこで最も感じたのは、「やっている人」と「やっていない人」が非常にはっきりと分かれているということでした。

なので、一度に約15名を対象にしたワークショップでは、知識や経験の差がありすぎて、どのレベルを基準にして話をすれば良いのか悩むことがよくありました。

せっかくお金を払ってきてもらうのに、基本的なレベルに終始してしまうのは、すでにチャレンジしている人にはもったいない。でも基本を抜かしていきなり中級レベルのことをしても、経験なしの人はついてこれない。

それならば!ということで、基本的なレベルのことはブログで紹介してしまって、「それ以上を目指したい!」という人や、「自分の現場ではどうしたらいいか教えてほしいです」という人を対象に、個別に講座を開くのが良いのではという結論に至り、この度ブログを開設することになりました。

ですので今後は、ワークショップ以外にも、個別にマンツーマンでライティング・テクニックを教えることができるように準備中です。楽しみにしていてください。

さて、それではこのブログはどんな方向けかと言うと、

  • これからウェディングフォトを始めたいとお考えの方
  • 初心者のウェディングフォトグラファー
  • 撮影の経験はあるけどワイヤレスストロボライティングはしたことがない
  • とにかくウェディングの小物撮影(ブツ撮り)が苦手!
  • いつも同じ写真ばかりでマンネリ化している

などです。

内容は、ウェディングフォトグラファーが使えそうな現場でのライティングやブツ撮りのコツなど。

なので中堅以上の方々は「そんなこと知っとるわ!」となることも多いかもしれません。でも、皆さんが現場で困ったとき、ライティングに困った時に頼ってもらえる、そんなブログを目指して始めてみようと思います。よろしくお願いします!

さて、記念すべき第一回ですが

「ぶっちゃけ、ウェディングにライティングって必要なの?~ライティングの必要性とメリット、デメリットを考えよう!」

というこのブログの根幹を揺るがす問題のお話(笑)

ウェディングにライティングって必要なの?ナチュラルに撮る方がいいんじゃないの?っていう方々もたくさんいると思いますので、僕なりの見解と、なんでライティングするのかを書きます。

結論:ライティング、できた方がいいです。

と言ってしまえば一言なのですが、それを言っちゃあおしめぇよなので。

まずは必要性の話ですが、僕が現場でライティングをするようになったのは「したいから」というよりも「した方がキレイに撮れる」もしくは「しないとキレイに撮れない」という状況に幾度もあたったから。すなわち、必然からきているものなんです。

そもそも、ウェディングの現場は写真撮影に向いてません(笑)。

白いドレスが黄色っぽく見えるタングステンライトをベースとしている会場は90%を越えているでしょうし、そのタングステンと水と油のような日光が差し込む会場もたくさんあります。しかもそれがメインテーブルだったりして逆光すごすぎ!だったり。もしくは入場シーンなどで使われる、というか使い古されたピンスポット。人物と同じ高さで当たるから影は出まくるわ古い機材だから色温度はひどいわ。かと言ってLEDだとフリッカーが出たり色温度が安定しなかったり。写真を撮る上で最重要な「光」と、それによって大きく左右される「色」が非常に不安定な現場だと言えます。

ですから「光と色」という側面から見たとき、結婚式場というのは悪条件の塊といっても過言ではないでしょう。

ただしこれは決して会場批判ではなく、光というものに密接に関わる仕事をしているから気になる問題なのです。そしてそれを気にできるからこのフォトグラファーという職業があるのです。むしろフォトグラファー側が、会場側へ「こういう光のほうが見栄えもいいし、お客様も喜ぶと思いますよ」とガシガシ提案できるくらいにならないとな、と思います。

近代写真の父、アルフレッド・スティーグリッツは

Wherever there is light, one can photograph.
光があるところなら、どこでも写真にすることができる

と言いました。

これは確かに、フォトグラファーとはそうあるべき、というほどの至言だと思いますが、結婚式というサービス業を根幹とした僕たちの写真は、芸術性が高いだけではお客様の満足に至らないことがある、というのが現状です。

よって、「きちんと写っている」ということも考えなければいけない。芸術性とサービス性の折り合いをつけ、最良の結果を残すのがウェディングフォトグラファーの仕事です。

では、最高の表情、ドレスや肌の色、陰影の強弱、会場の雰囲気、など挙げればきりがありませんが、それらすべてを現場の光に任せて撮影するとどうなるか。それはこれを読んでくださっているフォトグラファーの皆さんもよくご存知だと思います。決してお客様が求めているイメージに近いものではないでしょう。芸術性も高くなければ光も色も美しくなく、きちんと写っているとも言い難い、という写真しか撮れない現場も少なくないはずです。

それを「ナチュラル」と呼ぶんでしょうか?

違いますよね。もちろん、自然光がきれいに入ったり、柔らかいタングステンの光が均一にまわった会場など、ナチュラルな雰囲気で撮影できる現場もあります。そういう場所で無理矢理ライティングをする必要はまったくありませんが、前述のような現場に当たったとき、ライティングはウェディングフォトグラファーにとっても「必須」と呼べるスキルなのだと僕は考えています。

こういうことを言うと「時間がない」「会場側が許さない」「アシスタントがいないからできない」というような声も聞きますが、それらはお客様にとってまったく無関係の話です。こちら側のスキルとクオリティを高めることができれば、提供できる写真も周りの環境も変わっていき、ライティングをする自由も少しずつ得られるのです。

少し具体的なお話をしましょう。ライティングのメリットとデメリットについてです。

メリット

  • 光を自由に使うことにより、写真の色や雰囲気をコントロールできる

デメリット

  • 撮影に時間がかかる
  • 基本的にオフカメラライティングなので、スタンドやライトが倒れたりする危険性がある
  • ビデオグラファーさんの作品に影響がでる

羅列すると「あれ?デメリットの方が多いじゃん」となりますので、先にデメリットから説明をしましょう。

まず、撮影に時間がかかるということ。

ストロボを使うことでクオリティは上がりますが、どうしてもその分だけ時間がかかります。なので、いかに短い時間で必要な光を作るかというのも重要です。

次に、転倒と撤去の可能性。転倒は言わずもがなだと思いますが、撤去というのは会場のスタッフによる撤去です。これをやられないように会場側への配慮も必要です。

そして、ビデオさんへの影響。エンドロールに青い帯がバシャバシャと写ってしまう…というのはやはりビデオさんからしたら気分のいいものではありません。きちんと話し合いをして、どうしても!という時だけ使うようにする場合もあります。

ただ、ここに並べたデメリットは、フォトグラファー側のスキルや配慮により、大きく軽減できることもあります。そこは自分の立ち回り次第です。

さて、メリットの一行ですが「光を自由に使うことにより、写真の色や雰囲気をコントロールできる」というのは書いてしまうとあっさり、でも実はものすごく強い武器になるんです。

皆さん、現場の光だけで「きれい!」と誰もが思うような写真を撮れていますか?自分がこの会場を撮ると、他の誰かとは違うこんな写真が撮れます!と言える写真があるでしょうか。どちらも、現場の光だけではなかなか難しいと思います。ストロボを使えばいい写真が撮れるという訳ではありませんが、ストロボを使うことにより確実に表現の幅や可能性は広がっていきます。その具体策を一つ一つ、このブログで伝えていきたいのです。

では、もう一度改めて結論を。

結論:しなくて済むならそれでいいけど、した方がキレイに撮れる状況もたくさんある。よって、ライティングはできた方がいい。

これに尽きると思います。

ライティングしなくてすむならその方が楽ですし、迷惑もかからないし、表情やシーンに集中できます。しかし僕たちの現場はそれを許してくれません。だからライティングはできた方がいいんです。

次回はまず、僕が使っている機材の紹介と、その使用頻度や入手の優先順位などを書く予定です。できることなら実際に似たような機材を用意し、ご自身が撮影する現場でのイメージをしながら読んでいただければ、活用への道が早いと思います。

それではまた次回!


執筆者紹介

折原 貴祥 / おりはら たかあき

 1985年生まれ、埼玉県出身。写真家の父を持ち、幼少期より写真に接してきた経歴を持つ。
 ウェディングフォトを始める前は、ブツ撮りの広告スタジオにアシスタントとして所属。そのことから、ウェディングの現場でもあらゆるシーンをドラマチックに仕立て上げるストロボライティングに定評がある。

クッポグラフィー 折原ページ
http://www.kuppography.com/takaakiorihara/